語り得ぬもの 「多次元世界」「宇宙の果て」「宇宙の形」 こうした究極的な問題については 物理学者でも、数学者でも、そこらへんの一般人でも 解答に、さほどの違いはないのです 量子力学の超ひも理論においては 物質の最小単位は粒子ではなく 原子や素粒子よりもはるかに小さいヒモだとし、高次元を説きます 10次元のうち6次元は、ヒモの中に閉じこめられていて 残りの4次元、すなわち3次元+時間が、我々の宇宙だといいます かつては、26次元を説く立場もありました しかし、人間が思考可能なのは 三次元(空間世界)に、時間を加えた四次元までです 人間である以上、誰であれ 五次元の世界など、思考も、想像も、表現もできないはずです この事実は、言葉のバーチャルな世界といっても 本質についての概念を、無限に積み重ねられる というわけではないということです 本来の概念に、つぎつきと積み重ねられるものは それを装飾する言葉のレトリック(効果的な表現)に すぎないということです 陳那〔じんな・ディグナーガ。480~540頃 インド大乗仏教2大教派 唯識派の大成者〕は 共通性である「共相」〔ぐうそう・共通する特徴や性質 青いものに共通する青性、りんご・バナナ・みかんに共通する果実性 全ての事物にみられる無常性など。共相は非存在のものである〕は 比量(推理知)によって認識され 事物の固有の特徴や性質である「自相」は 概念によらず直接実在を認識する現量により認識される 共相のみが言語による伝達が可能で 言語の使用は指示されるもの以外のものを 排除することで成り立っている と考えました つまり、A子さんのことを他人に伝えるには 犬っころみたいな顔してて、おてんばで 大飯喰い・・・と ≪共通性≫を重ねていくしかないということです A子さんの固有の特徴や性質は、伝達不可能ということです A子さんの固有の特徴や性質は 我々の世界の「言語ゲーム」にはのっけられないということです ウィトゲンシュタインは 「語りえぬものについては、沈黙しなければならない」 〔語られたものだけが、現実になり、真実にもなる〕 と、言っていますが 事物の固有性ですら「語り得ぬもの」なのです もちろん、A子さんの固有性は、認識も、思考もできます この事実は、思考よりも言葉のほうが限界が早いということです そして、思考の世界にも 言葉の世界にも限界があるからこそ 「時間」についても「幸福」についても「価値」についても 人間の思考と言葉による創造なので ≪解けない謎はない≫ということなのです 【 おまけ 編 】 コミュニケーションと言葉の世界 人類のいしずえと頂点 (ひとつ戻る) |
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